Eurovision 2015 出場者を見よう! ~ノルウェー~

Eurovision 2015年の楽曲の中で
私が最も好きな曲

Eurovisionが終わっても
時折、ふと思い出すのはこの良くが最も多い

Eurovision史上 最も美しい楽曲
ノルウェー代表
Mørland & Debrah Scarlett - A Monster Like Me



歌詞
愛しい人よ、キミに真実を話そう
ボクは幼いころに、とても恐ろしいことをしでかしてしまった
ボクの頭は真っ白になって、自制が利かなくなったんだ
知らなかったんだ。ボクはまだほんの小さな少年だったから
ボクはキミから離れるべきだろう

キミはボクの中に理想の男性像を見出したようだけど
ボクはキミを諦めるべきだろう
手を振ってさよならと言って
君には僕みたいな『モンスター』のいない生活を送ってほしい

愛しいアナタ、私はアナタにとってなんなの
私はこの凄惨な真実を明かす引き金を引いたわ
ああ、私を抱きしめて。感情が高ぶるのを抑えられないの
何か美しい曲を歌って、この気持ちを止めて
私はアナタを離してあげるべきなんでしょうけど

デュエットパート
キミはボクの中に理想の男性像を見出したようだけど
ボクはキミを諦めるべきだろう
手を振ってさよならと言って
君には僕みたいな『モンスター』のいない生活を送ってほしい

歌詞解釈と解説
解説自体は、2016年に一度やっているので
一部は当時の記事で書いたことを流用しようと思う


さて
意味深なこの歌詞の内容だが
誰もが連想するのは、殺人事件に関する
罪を犯した男性と
その罪を知っていて男性に告白させた女性
その二人が主人公になっている物語という

おそらくEurovisionの楽曲の中でも
極めて異質な物語で
『罪と愛』をテーマにした楽曲になっている


物語は、男性の独白から始まる

主人公の男性は
少年だった頃に誰かを殺害したことを
恋人である女性に伝える、という構図だ

その誰かを殺害した当時
彼は彼のしでかした事で、相手が死ぬとは思っていなかったらしい
ということが、同時に読み取れる

歌詞の中で言えば
I did something terrible in my early youth
My mind went blank, I lost control
I was just a little boy, I did not know

early youth 若い頃に
did something terrible 酷いことをしでかした
それは、mind went blank, I lost control 頭が真っ白になって
自制が効かずにやってしまったこと

この部分で、ついカッとなって、暴力を振るってしまった
と読み取ることが出来る

I was just a little boy, I did not know
まだほんの子供だったから、知らなかったんだ
この「知らなかったんだ」と言うのが
何を知らなかったのかと言うと
しでかした事によって「その結果どうなるのか」が分からなかったと言うこと

これは、2通りの解釈をすることが出来る

一つは、私が先に書いたのと同じ解釈で
『暴力』によって、相手が意識を失ったのは見たが
恐くなってその場から離れてしまった
この時、その後で相手がどうなったのかは知らなかったが
これぐらいの力加減ならその人が死ぬだろうな、と言うのが分かっていなかったため
少なくとも死ぬとは思っていなかった
ということは、今ならそれが最悪死に至らしめるような暴力だと分かっていて
手当をすれば助かっていたはずだと分かっている
今なら分かるからこそ「子供のころだったから知らなかった」と言っている

と言う解釈

もう一方は
暴力を振るった相手が死んだのを確認してその場を後にした(逃げた)
それも、やはり力加減が分からなかったから
と言う解釈

どちらの解釈でも以降の歌詞に繋がるので
読み手次第


続く歌詞の
I better let you go
ボクはキミの元を離れるべきだろう
と言うのは、衝動的に暴力を振るう可能性があるから
キミのもとを離れた方がいいだろう
と言う解釈も出来るが、おそらくそうではない

To find the prince you thought you found in me
男性は相手の女性の瞳を見る
そこには、理想の男性像化した(prince)自分の姿がある
しかし、自分はそんな人間ではない
恐ろしいことをしてしまった、酷い人間なのだ

Just wave and say goodbye and let you live
Without a monster like me
同時に、キミの期待、希望、夢を裏切りたくはない
だから、ボクはただ手を振って、いつものようにお別れを言って
キミの元を離れようと思う
君には僕みたいな『モンスター』のいない生活を送ってほしいから

男性側は過去の過ちに対する罪の意識が非常に強く
自分を『モンスター』だと比喩してさえいる

ここで重要なのは
罪の意識を持っているということは本当に罪を犯した=殺人をした
ということよりも
今、目の前にいる恋人に対して、とても深い愛情と信頼を持っているため
彼女を巻き込みたくないという思いやりから
自ら彼女のもとを離れようとしている、ということなのだが
これだけだと、男性側は罪から逃げようとしているだけとも取れてしまう

そして、
この罪の意識は、とはいえ、今までずっと抱えていたと言うわけではないようである

なぜ男性はこの独白を始めたのか
なぜ女性のもとを離れようと思ったのか

それが、続く女性の歌詞によって明らかにされる


女性主人公は
アナタにとって私はなんなのか
という疑問から始まる

女性は男性と違って、過去の事について悔やむのではなく

Now I have pulled the trigger on this awful truth
私はこの凄惨な真実を明かす引き金を引いた

今まさにやったこと
事実を明らかにしたことを悔やんでいる
それと同時に、彼女の中で
burning up = 怒りなどの激しい感情
が湧き上がり、抑えられなくなる

彼女はそれをどうしても抑えたく
男性に助けを求めるが
男性の元を離れる決心をつける
という内容になっている

男性歌詞パートと合わせて考えると

女性は男性がしでかした事を知っており
男性によって酷い目にあった人物が
女性の友人や親等の近しい存在である

そのことを絶妙なタイミングで打ち明け
男性を絶望させ、追い詰めようと考えていたが
男性に近づいたことによって、男性の事を愛してしまった

男性のしでかしたことは許されることではなく
今でもそのことを考えると女性は頭に血が上る
だけど、同時に男性の事も確かに愛しているので
何かをしてしまう前に、男性の元を離れたい
男性のことを心から愛しているからこそ
自分のような醜い心を持った『モンスター』はアナタの傍にいるべきではない

と言う解釈


そして、二人によるサビのデュエットパートに入るわけだが
それと同時に、女性視点でのサビパートも入る

女性パートでのサビは
I better let you go...
私はアナタを離してあげるべきなんでしょうけど
と、立ち止まる描写が入り

To find the prince you thought you found in me
I better set you free and give you up
Just wave and say goodbye and let you live
Without a monster like me
男性と同じ歌詞が入ってくる
ただし、ここでの意味合いがいくつか変わってくる
もっとも変わるのが

To find the prince you thought you found in me
この部分なのだが
prince 王子
と書いてあるし、歌唱でも実際、そのように発音されているが
ここは女性視点の場合
princess 姫
というように改変しても良いと思う

というのも
女性歌詞パートの一番最初に戻るのだが
Honey, what am I to you
愛しいアナタ、私はアナタにとってなんなの
これの答えが、サビの
To find the princess you thought you found in me
アナタは私の中に理想の女性像を見出したようだけど
という形で繋がり
そのままサビの歌詞全体が女性からの視点で男性と同じことを考えている
というように繋がっていくわけだ

こう考えると
サビで互いに思いやり合い
本当の意味で愛し合っているからこそ
互いに離れていこうとしている
という、非常に強い想いが見えてくると思う


また、
I better let you goと
I better set you free and give you up
について

キミを解放する
という言葉の意味合い
これがものすごくよく考えられていて

男性の場合
女性が自分の事を理想の人として見ていること以外に
自分を恨んでいることに気がついているからこそのセリフだろうと考えられる

そもそも、彼女の口から『酷い事実』を打ち明ける引き金が引かれたのだから
彼女が『酷い事実』が何なのかは知っているのだし
それを打ち明けられたのだから、女性が知っていることを男性も知っている

つまり
男性が言う『キミを解放する』は
ボクはキミが思っているような素晴らしい人間ではないよ
と言う意味合いのほかに
ボクがキミを『モンスター』にしてしまっている
と言うことに、男性は気付いているのだ

だから、自分が傍にいることで縛られてしまう女性を解放するために
男性は自ら女性のもとを離れようとする
男性の方こそが『モンスター』であり
女性には『モンスター』になって欲しくないから


女性の場合
男性に『酷い事実』を打ち明けさせた事によって
互いの認識が、ただの恋人同士ではなくなってしまった

女性は男性の傍にいてあげたいし
女性自身、そうしたいのだが
女性が男性の傍にいることによって
男性は常に罪の意識に悩まされるようになる

だからこそ、男性を罪の意識から解放してあげるために、自分から男性の傍から離れよう
二人の関係を壊した上に、今なお憎しみによって支配されつつある彼女こそが『モンスター』なのだから

互いに互いのことを思いやり
歌詞に書かれてある言葉を
二人ともが使い、意味がクルクルと回り続けている
ライブパフォーマンスでは、カメラワークを使って、これを見事に表現している


さて
ここまで読んで
じゃあタイトルにもなっている
A Monster Like Me

この言葉の意味がどうなるのか
改めて考えてみよう

Monster 怪物
というのは、あくまでも比喩表現であるが
その表現の仕方は、二人の主人公からすると
似ているようでいて、異なっている

男性の場合は
実際に怪物(加害者)となった過去を持っている
その罪の意識を持っているがゆえに、自分をMonsterだと言っている

女性の場合は
男性に仕返しをしてやろうと思った
その心が醜いMonsterだと言っている

だが、この曲を聞いて
ライブパフォーマンスを見た上で
そこにMonsterはいるだろうか?

確かに、二人は怪物だった瞬間があるのかもしれない
だが、今ここにいるのは、互いのことを心から想いあう二人の男女だけで
怪物だと思っているのは、互いに自分のことだけなのである

結局、最後まで二人がまた一緒になることはなく
それゆえに、この曲のもの悲しさには
美しさが生まれている


ライブパフォーマンス考察
カメラワークについては先に書いてしまったが
二人の周囲を回るようなカメラワークは
互いに互いのことを想いあっていることを表現している
想いや愛の向かう先が一方向なのではなく
円を描いている = 想い合っている
ということだ

それから
この楽曲をライブ版で見ることを強く勧める理由として
コリオグラフが秀逸であるということが大きい

というのも、コリオをよく見ていると
どちらも、本当にあとちょっと
ほんのあと数ミリ手を伸ばせば
相手の体に触れることができるのに
その数ミリ分、手を伸ばせずにいる
手を伸ばしたいのに伸ばせないでいる
というコリオ演出がかかっている

男性の胸元を手で触れようとするが手を引っ込める女性のコリオや
手を繋げそうなのに、すれ違うだけで終わってしまうコリオ
立ち位置替えで2度もすれ違う流れ
どれをとっても、歌詞の中で伝えたいことをとても分かりやすく表現している

それから、サビでの歌唱とBGM、ポージング
二人の愛の深さ、その強さが
実に見事に表現されている

そして、ラストの背中合わせの演出
結局、二人の関係が修復されることがないことを暗示するとともに
だけど、肩越しに女性のことを見ようとする男性の視線
実に
実に見事というほかない


最後に
どの曲にも、その歌詞を読み解くことで、その作品世界を見ることができます
それは、その人の人生経験であったり
空想の物語であったり
今、誰かに伝えたい思いであったり

そして、それらは歌手による
歌唱、表情、ボディランゲージによる表現や演技によって
形や色が付け加えられていき
物語に説得力が生まれ
作品世界がより鮮明な形で
果てなく広がっていきます

私はこの曲が2015年の曲の中で一番好きです
この曲に描かれた、比類なき美しさを持った物語から
私はとても強いインスピレーションを受けました

登場人物の感情に共感できるとか
物語に自分の人生を重ねるとか
感覚的に好きだとか
そういうものではなく

この曲を聞くと、そこに書かれてある作品世界の物語が
実に明確な形で脳内で流れるのです
そして、ビデオテープが擦り切れるまで繰り返し見続けるように
何度もこの曲を聴いているうちに
この曲のことが忘れられなくなっていました

私は生涯この曲を忘れないでしょう


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公式歌詞
https://www.eurovision.tv/event/lyrics?event=2063&song=32713

Eurovision 公式HP
http://www.eurovision.tv/page/timeline

YouTube公式チャンネル
https://www.youtube.com/user/eurovision/featured

Wikipedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Eurovision_Song_Contest_2015



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