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Eurovision 2018 ルーマニア代表 The Humans のGoodbye 和訳・歌詞解釈と考察

6週間にも及んだルーマニア国内予選大会
Selectia Nationala 2018

この大会を勝ち抜き、The Humansは総勢62組の歌手たちの頂点に立った
ボーカルのCristina Caramarcu を中心に
ギターのAlexandru Cismaru 、キーボードの Alexandru Matei
ベースのAlin Neagoe 、ドラムのAdi Tetrade、チェリストのCorina Matei
の6名で構成されるこのバンドが紡ぐのは
勇ましいながらも優しく、そして切ない楽曲『Goodbye』

とてもシンプルなロックバラードですが
そこに秘められたメッセージに気づくことが出来れば
爽快感のある歌唱だからこそ、そこに込められた苦悩が見えてくるでしょう


もくじ
歌詞和訳
歌詞解釈と解説
 - Verse1 挫折と絶望
 - Verse2 一人ぼっちの叫び声
 - Goodbye の違い
 - Chorus 見るべき世界
Bridge が繋げる二つの可能性
声を上げるということ
MVとライブ考察

国内予選大会Selectia Nationala 2018


公式MV




歌詞和訳『Goodbye』
Verse 1
It’s time
時間だ
For me to say goodbye
さよならを言うための
It’s fine
でもいいんだ
I’ve tried a million times
ボクは何度も試そうとした
To kiss
キスをしようと
The emptiness
空虚さに
And make her mine
そして彼女をボクのものに

Verse 2
I should’ve stayed
ボクは待っておくべきだったんだ
But I already left a thousand times
なのにボクは何度も置き去りにしてしまっていた
I’ve won my fights
ボクは自分の戦いに勝った
Nobody new nothin’ about
誰もその事を知りもしない
All alone
一人ぼっちで
Trapped in a void
虚さから抜け出せず
Can’t see the light
光なんて見えない
Goodbye
さようなら

Chorus 1
Why don’t you see the beauty that surrounds you everywhere
なんでキミは自分の周りにある美しいものに気づかないんだ
Why can’t you feel the joy in all the small things people share
なんで誰もが分かち合っている些細な喜びを 感じることができないんだ
And all the happiness, that by the way is all for free
そして全ての幸せを手に入れるための道は自由だ
Open your heart, receive the love and stay with me
心を開いて、愛を受け取ってボクと一緒にいて欲しい

Bridge
Please
Don’t be afraid
どうか恐がらないで
I hear your cry
キミの泣く声が聞こえる
Don’t cry
泣かないで

Chorus 2
We should all see the beauty of the precious gifts we have
誰もが持ってる美しい才能をボクらは見るべきなんだ
‘Cause everyone deserves the power to go straight ahead
だって誰もがまっすぐ先へと進む資格があるんだもの
Never give up, don’t hit the floor, don’t trust in all the lies
絶対に諦めるな、膝をつくな、あらゆる嘘を信じるな
No matter what the odds will bring you, please don’t say goodbye
結果がどうなるかなんて関係ない、お願いだからさよならなんて言わないで

歌詞参照元
https://genius.com/The-humans-band-goodbye-lyrics


歌詞解釈と解説
歌詞をざっと読んだだけでも分かるかとは思いますが
この曲は、何らかの挫折を味わい、人生に絶望してしまっている人たちに対して
再び立ち上がれるように手を差し伸べている、応援ソングです
それも、ただ無責任に応援するのでも、あるいは根性論で努力を押し付けるのでもなく
絶望の底から救い出された歌詞の主人公が
今度は誰かを救い出そうと手を差し伸べる、という内容になっています

また、楽曲の構成とも見事にリンクしており
曲の動きがそのまま主人公の心の動きを表していると言っていいでしょう
順番に曲の内容を読んでいきます

Verse1 挫折と絶望
ピアノの伴奏のみで始まる歌い出しのメロディーは
中低音の、温かみのある音色によって
とても優しく、穏やかで、心安らぐ雰囲気があります
ところが、MV・ライブ双方ともに、Cristina の表情と歌唱は硬く
どこか、無感情な状態で歌っているようにさえ思えます

「It’s time for me to say goodbye」から始まるVerse1は
絶望に打ちひしがれて、身動きが取れなくなってしまった主人公を表現しています
この歌詞の中の「make her mine」の『Her (彼女)』とは
『The emptiness (空虚)』そのものを指しており
空虚さを自分のものにしてしまうことで、現状を受け入れる
というニュアンスの内容となっています
少し歌詞の意味合いとは変わってしまいますが
人によっては自分の気持ちに折り合いをつける、という意味にもとれるかもしれませんね
しかし、主人公は「million times (何度となく) 」 空虚さと向き合おうとするも
それが叶わなかった、状況を改善しようとするも、何も変えることが出来なかったため
ついに、この世界に別れを告げようとしている、という内容となっています

Verse 2 一人ぼっちの叫び声
映像面ではチェロが参加し
楽曲としてはバイオリンなどの弦楽器の音色が加わります
歌唱に関してはパワフルでありながら、どこか切なさを感じさせる歌い方になっており
Cristina の表情はVerse1 と比べると、感情が宿った状態となっています
ところが、歌唱の力強さや、楽曲の美しさとは裏腹に
今にも壊れてしまいそうな、苦悶と苦悩が綯い交ぜになった表情を浮かべているのです
特に、Verse 2 の最後で『Goodbye』とシャウトする部分に関しては
今すぐ泣き出したいのに泣きだせない
胸の中にあるものを吐き出したいのに吐き出しきれない
と言った、渦巻く心苦しさに潰されそうな表情で、声で、叫んでいます

Verse2 では、Verse1 の歌詞「I’ve tried a million times 」の内容
世界に別れを告げるに至った流れが描かれています
「I should’ve stayed」いっそのこと、状況を改善しなければよかった
そう歌う主人公は、しかし「thousand times (何度となく)」その考えを置き去りにして
「I’ve won my fights」自分と向き合い、脳内の敵
ネガティブな思考や、サヨナラをしようとする思考に勝利してきています
しかし、心の中で行われた激闘に勝利したとしても
「Nobody new nothin’ about」現実では誰一人そのことに気付いてくれませんし
延々と続く孤独な精神内での戦いに、誰も手を貸してはくれません
そうして主人公はいつしか「Trapped in a void」戦うことに虚しさを感じ
ついには見るべきものが見えなくなり、進むべき道が見えなくなります

そして、主人公は「Goodbye」と叫びます
この世界から離れていくために、サヨナラをします

Goodbye の違い
タイトルにもなっている『Goodbye』という言葉は
Verse1、Verse2、そして歌詞のラストで出てきます
このうち、Verse1 と2 の「Goodbye」は似ているようで、全く違う意味を持っています

Verse1 の「Goodbye」は、人生に絶望し、生きることを諦めた上でのサヨナラです
冒頭の「It’s time (時が来た)」という歌詞から
もう自分一人ではどうしようもない状況まで来てしまっていることが描かれており
空虚さに取り込まれた主人公は、もはや状況を変えるためにもがこうとすらしていません

一方で、Verse2 の「Goodbye」は、全く逆の解釈をすることができます
空虚さに飲まれたVerse1 とは違い、力強い声でネガティブな言葉を叫んでいます
「Nobody new nothin’ about」 誰かに知って欲しかった
「All alone」 誰かに助けて欲しかった
「Can’t see the light」 本当は輝かしい世界が見たい
Verse1 の「It’s time for me to say goodbye」が世界に別れを告げる言葉であるならば
「Goodbye」は「死にたい」という言葉に置き換えることができるでしょう
しかし、Verse2 のシャウトでCristina が本当に言いたいことは
「死にたい」ではなく「生きたい」という心の叫びです
死にたくないから、誰か助けてよ、と助けを乞うように叫んでいるのです
それが、Verse2 での「Goodbye」の意味です

Chorus 見るべき世界
ここからは、サビ(Chorus)→サビ前(Bridge)→サビ(Chorus)という流れになっていますが
歌詞の内容や音楽的には、Verse1 と Verse2 の関係ほど大きな差はないので
一つにまとめて書いていきます(Bridgeは別として)

まず、それまで参加していなかったバンドメンバーの演奏が
サビになってようやく入ることとなります
それまでの、ピアノと弦楽器のみだったバラード調な音楽とは打って変わって
とても迫力があり、疾走感があり、開放感と解放感があります
眺めていると飛んでいけそうなほどに明るい青空の下
どこまでも続く地平線を、あてもなく、心の向くままにバイクで走っているかのような
まるで、気持ちの良い風が、さっ、と胸を通り抜けていくような音楽になっています
そして、Cristina も、髪を振り乱し、それまでとは違ってとても力強い歌唱をしています
そこには、誰かに助けを乞うような切ない叫び声はなく
誰かの手を引っ張っていこうとする力強さがあります

サビの歌詞は、改めて解説が必要な内容ではないとは思いますが
世界に絶望してしまった主人公に対して、本当に見るべきものは何なのかを説いています

絶望するほどこの世界は終わってなんかいない、もっと身近なところに美しいものはある
もっと周りをよく見てごらん、キミの隣にはボクがいるのだから
と、主人公に寄り添うChorus1

みんな同じ人間なんじゃなくて、誰もが特別な存在
誰だって生きる資格を持っているんだ、だから
諦めないで、他人の声に惑わされず、自分の足で立って
言わないで、お願いだからさよならだなんてそんなこと
と、主人公を勇気づけるChorus2


Bridge が繋げる二つの可能性
さて、ここまで『Goodbye』の歌詞について、楽曲の構成と共に解説をしてきましたが
実はこの曲の歌詞は構造が多重になっていて
読み方によって物語が大きく変わって見えるようになっています
歌詞の本質そのものは変わりませんが
誰が自殺をしようとしているのか
誰が勇気づけるような言葉で歌っているのか
そこが変わってくるのです

そのカギとなるのが、サビとサビの間にあるBridge と
本来あるはずのVerse の後に、Bridge が存在していない、という部分です

Bridge の歌詞は、打ちひしがれて涙を流してる人に対して
「Don’t cry (泣かないで)」と声をかける内容になっていますが
その直後のChristina のシャウトは、苦しんでる人を勇気づける側には見えません

また、一般的にはサビとサビの間にサビ前を置くのではなく
AメロBメロの後、サビの前にBridge を置くかと思いますが
この曲では、あえてVerse とサビとの間に繋がりがありません

考えられる構図は、大きく分けで二通り
一つは、Verse1 & 2 で絶望していた主人公が
Chorus の声の導きによって立ち上がれるようになる、という構図
もう一方は、Verse 後、人の手を借りて生きなおすことができた主人公が
今度は誰かに手を差し伸べる側になっている、という構図

もし前者の構図で固定させたいのであれば
Verse1 とVerse2 は、サビの視点と揃えておく必要があるので
葛藤する主人公ではなく、葛藤する誰かを描くことになるはずです
また、後者の場合であったとしても、Bridge では苦しそうなシャウトをするのではなく
掴まれた手を引っ張り上げるような歌唱にするものかと思われます

どちらの意味で受け取っても構わないと思います
どちらの意味でも受け取れるように作られているのですから


を上げるということ
調べたところによると、バンドメンバーの人生経験をもとに
ボーカルのCristina Caramarcu が作詞をした楽曲なのだそうで
http://wiwibloggs.com
鬱病やネガティブな思考に捕らわれている人へ
希望のメッセージを送ることがテーマになっているのだそうです
また、手遅れになってしまうその前に、苦しんでいるということを声に出しましょう
それは決して恥ずかしいことではないんですよ、というメッセージが込められると同時に
他人に無関心な現代人に対しても、助けを呼ぶ声をしっかりと聞いて
手を差し伸べられるのなら差し出しましょう、という想いも込められているそうです

テーマとしては、今年のマルタ代表Christabelle の『Taboo』に近いものがありますね
ESC2018 マルタ代表Christabelle の Taboo 和訳・歌詞解釈と考察
http://sheilabirlings.blog33.fc2.com/blog-entry-5630.html


MVとライブ考察
ライブでの演出においては
「Verse1 で黒い外套を身に纏い → Verse2 で外套を剥がされる」
この流れで、Verse は時系列で並んでいるのではないことが分かります
虚しさに捕らわれ、自殺をほのめかしている主人公が
しかし、本心では死にたくないと強い意志を持っている
それを、視覚的に分かりやすく表現しているように思います

MVにも出てくる白い仮面の人たちは、はっきりとした答えは出てきませんが
Verse の主人公のように、自分の心を殺している人たちなのではないでしょうか
本当は苦しんでいるのに、助けを呼ぶこともできず、声を上げられないでいる人たち
Christabelleの『Taboo』で言うところの、タブーを破れないでいる人たち

あるいは、wiwibloggsさんのサイトで書かれてあるインタビューにあるように
他人に無関心な現代人の象徴とも取れます


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Selecția Națională 2018 Finala レビュー記事
http://sheilabirlings.blog33.fc2.com/blog-entry-5668.html

もくじ記事
http://sheilabirlings.blog33.fc2.com/blog-entry-5521.html


参考文献
Emptiness vs Void - What's the difference?
https://wikidiff.com/emptiness/void
昔、その気もないのにうっかり自殺しかけました。
https://cakes.mu/posts/15823
10 Things About…The Humans!
https://eurovisionni.wordpress.com/2018/03/04/10-things-about-the-humans/#more-7891
歌詞参考サイト
https://genius.com/The-humans-band-goodbye-lyrics
wiwibloggs
http://wiwibloggs.com

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