Eurovision 2018 イスラエル代表 Netta Barzilaiの Toy 和訳・歌詞解釈と考察

あたしはあんたのおもちゃじゃないのよ おバカさん 
イスラエルのEurovision 2018 代表者を決定する
国内オーディション番組 HaKokhav HaBa La'Eurovizion
2017年10月末から始まったこの番組は翌2018年の2月13日間でかかり
スペイン同様、長期間に渡って熾烈な戦いを繰り広げていた出場者たちでしたが
この大会を勝ち抜き、見事リスボン行きの切符を手にしたのは
ルーパーを駆使した歌唱がトレードマークの Netta Barzilai でした
ESCでは極めて珍しいタイプの歌手ですが、それもそのはず
大会の規約として、歌手は生声で歌う必要があり、録音音声は禁止されているのですが
ルーパーはその場で録音した音声を繰り返し再生するものです

しかし、録音した音声に関しては、昨年ノルウェー代表のJOWST
一部、録音した音声の使用を認められた、という前例があるので
今年のルーパーの使用も認められたのかもしれません

さて、そんなNetta が歌う曲『Toy』
ルーパーを使うという珍しいことをしているだけでなく
その歌唱や楽曲の雰囲気に至るまで、非常に奇抜な楽曲と言えるでしょう
しかし、歌詞の中に込められた力強く、そして怒りを伴ったメッセージは
歌詞の複雑さ、暗喩の多さ、読み込み難易度の高さの海から飛び出し
とても分かりやすく、伝わりやすく書かれています

ピカチュウなどの目を引く単語にとらわれず
しっかりと歌詞を見れば、そこに書かれたメッセージが伝わってくるでしょう

もくじ
歌詞和訳『Toy』
歌詞解釈と解説
歌詞に隠された言葉の意味
ニワトリの歌唱について
歌い出しの歌唱について
その他

公式MV

  
歌詞和訳『Toy』
Intro
Ree, ouch, hey, hm, la
Ree, ouch, hey, hm, la
Ree, ouch, hey, hm, la
Ree, ouch, hey, hm, la
Ree, ouch, hey, hm, la
Ree, ouch, hey, hm, la

Verse 1
Look at me, I'm a beautiful creature
あたしを見て、あたしは美しい生き物
I don't care about your "modern time preachers"
あなたにとっての『イマドキの説教師』なんてどうだっていいわ
Welcome boys, too much noise, I will teach ya
いらっしゃい坊やたち、うるさいわよ、あたしが教えてあげる
(Pam pam pa hoo, turram pam pa hoo)
Hey, I think you forgot how to play
ちょっと、あなた遊び方を忘れたみたいね
My teddy bear's running away
あたしのテディベアが逃げ出したわ
The Barbie got something to say, hey, hey, hey
バービーがあなたに言いたいことがあるって
Hey! My "Simon says" leave me alone
ちょっと、あたしの『サイモン』があたしを一人にしろってさ
I'm taking my Pikachu home
あたしはピカチュウを連れて帰るわ
You're stupid just like your smartphone
あなたスマホみたいにおバカさんね

Pre-Chorus
Wonder woman, don't you ever forget
ワンダーウーマン、忘れないで
You're divine and he's about to regret
貴方は神様で、彼は今に後悔するわ
He's a bucka-mhm-buckbuckbuck-mhm boy
彼は※(伏字的な表現)※な男
Bucka-mhm-buckbuckbuck
I'm not your bucka-mhm-buck-mhm-buck-mhm
あたしはあんたの※(伏字的な表現)※じゃないのよ

Chorus
I'm not your toy (Not your toy)
あたしはあんたのおもちゃじゃないのよ
You stupid boy (Stupid boy)
このおバカさん
I'll take you down now, make you watch
あんたを連れに行くわ、あんたに見せるの
We're dancing with my dolls on the MadaBaka Beat
あたしたちがお人形さんと一緒に『まだバカ』ビートで踊ってるところを

Not your toy (Cululoo, cululoo)
あんたのおもちゃじゃないのよ
(Cululoo, cululoo)

Verse 2
A-A-A-Ani Lo buba!
ア、ア、ア、アニロブバ!
Don't you go and play with me boy!
坊や、あたしと『お遊び』できるだなんて思わないことね!
A-A-A-Ani Lo buba!
ア、ア、ア、アニロブバ!
Don't you go and play… Shake!
『お遊び』できるだなんて……ほら!
(Kulului, Kulului), Ah, wedding bells ringing
ああ、ウエディングベルが鳴る
(Kulului, Kulului), Ah, money man bling-bling
ああ、金持ち男が金を見せる
I don't care about your 'stefa', baby
あんたの『ステファ』なんて興味ないわ
(Pam pam pa hoo, Turram pam pa hoo)

Pre-Chorus
Wonder woman, don't you ever forget
ワンダーウーマン、忘れないで
You're divine and he's about to regret
貴方は神様で、彼は今に後悔するわ
He's a bucka-mhm-buckbuckbuck-mhm boy
彼は※(伏字的な表現)※な男
Bucka-mhm-buckbuckbuck
I'm not your bucka-mhm-buck-mhm-buck-mhm
あたしはあんたの※(伏字的な表現)※じゃないのよ

Chorus
I'm not your toy (Not your toy)
あたしはあんたのおもちゃじゃないのよ
You stupid boy (Stupid boy)
このおバカさん
I'll take you down now, make you watch
あんたを連れに行くわ、あんたに見せるの
We're dancing with my dolls on the MadaBaka Beat
あたしたちがお人形さんと一緒に『まだバカ』ビートで踊ってるところを

Bridge
I'll t-t-t-take you now
あ、あ、あ、あんたを
W-w-w-with me now, boy
つ、つ、つ、連れてくわ、坊や

Outro
(I'm not your toy)
(あたしはあんたのおもちゃじゃない)
You stupid boy
このおバカさん
I'll take you down now, make you watch me
あんたを連れて行くわ、あんたに見せるの
Dancing with my dolls on the MadaBaka Beat
あたしがお人形さんと一緒に『まだバカ』ビートで踊ってるところを
(I'm not your toy) Look at me, I'm a beautiful creature
あたしを見て、あたしは美しい生き物
(You stupid boy) I don't care about your "modern time preacher"
『イマドキの説教師』なんてどうだっていいわ
(I'm not your toy) Not your toy, not your toy, not your toy, toy
I'm not your toy, not your toy, not your toy, toy

歌詞参照元
https://eurovision.tv/participant/netta-barzilai
https://genius.com/Netta-barzilai-toy-lyrics

  
歌詞解釈と解説
2017年のイタリア代表のように、歌詞の中には実在する『元ネタ』的な言葉
英語で言うところの Reference となるものがいくつも飛び出してくる楽曲です
一つ一つの言葉には裏の意味、暗喩が含まれており
かなり気を付けて歌詞を読まないと、その意味は理解しきれないことでしょう
もっとも、Francesco Gabbani の Occidentali's Karma ほど難解ではありませんし
あの曲ほど複数の引用元があるわけでもありませんが

そして、この曲で伝えたいメッセージというものは、実はかなりシンプルで
一貫して、サビで繰り返されている言葉が最大のメッセージとなっています
I'm not your toy(あたしはあんたのおもちゃじゃないのよ)
つまり、女性は男のおもちゃではないのである、という
女性の人権や社会的地位について歌っている曲となっているという事です
もちろん、そうした社会的なことを除いて考えること
女性をモノのように扱う男性全般に対して反論をする曲という解釈もできます
が、社会問題に切り込もうとしていることは、歌詞の中でも暗に書かれています
(あるいは直接的に)

いずれにしても、この曲はまず前提として、そういう歌詞であることを念頭に置いてみると
歌詞に書かれてある言葉の意味が分かりやすくなると思います
それでも理解するのが難しいことには変わり在りませんが
  
歌詞に隠された言葉の意味
"modern time preachers"
歌詞の冒頭から登場するこの言葉の意味は
直訳すると「最近の説教師(伝道者あるいは訓戒者)」となります
新興宗教、という意味合いとして受け取ることもできますが
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の三宗教の事を言っているのだろうと思われます
肝となっているのは"modern time preachers"の前に
『Your (アンタの)』とついているという事です
最初に書いたように、この曲は前提として、男尊女卑に意を唱える曲であること
上記三宗教は、いずれも男尊女卑社会を作った元祖であるとも言われていることから
単に「最近の宗教」と訳すよりかは、三宗教を指していると考える方が
主人公とは意見が違う相手の男性は、昔からの男尊女卑的考えの影響を受けている
と、解釈ができることになりますし
実際、そう考えるとVerse1 全体が
いつまでも男尊女卑な考え方に捕らわれている男性に
本来あるべき女性の立場を教えてやる、という意味合いに取ることができ
辻褄が合うと言えるでしょう

The Barbie got something to say
世界的に有名な、マテル社の着せ替え人形である『バービー人形』を指しています
が、ここではスラング的な意味合いを持っています
バービー人形は、その派手な格好や完璧なプロポーションと
購入して手に入れる人形である、という事から
尻軽女や整形した女性などの意味に使われる場合があります
https://www.urbandictionary.com/define.php?term=barbie%20girl
ここでは、転じて、そういう女性を見るような目つきでいる男性に対して
そのバービー人形がアンタに話がある(文句を言いたがっている)という意味になります

My "Simon says" leave me alone
"Simon says" とは、英語圏でよく知られている遊びだそうです
サイモン(鬼)の命令通りに、手を上げたりなどの行動をしなければならないのですが
「Simon says」から始まらない命令を聞いてしまうと失敗になるというゲームだそうです

ここでは、二つの意味合いを内包しています
一つは、先に書いた『サイモン・セッズ』ゲームの通り
サイモンが下した「私を放っておいて」という命令に対して、相手は従わなければならない
という、ゲームのルールに則った行動という解釈
二つ目は、色眼鏡で見てくる男性に対して、自分は尻軽女などではなく
心に決めた相手、恋人である『サイモン』がちゃんといて、不貞を働く気は毛頭ない
だから、私に近づくんじゃない、という解釈

いずれにしても、男性はみんな男尊女卑的考えを持っていることを前提に
『サイモン』という『男性』の命令は絶対という、男尊女卑社会を皮肉が込められています

テディベアとピカチュウ
逃げ出したテディベアと、連れて帰ってもらえるピカチュウの差が何なのか
まず、テディベアは子供の暗喩として使われることがあります
特に北米では、子供の残虐表現を厳しく規制されており
子供が痛めつけられるような表現や、子供の死体の表現は
基本的にはしてはいけないようになっています
http://フォールアウト4.com/fallout4-teddybear/

ただ、一方で、そういった表現を使わざるを得ない時
例えば子供の死を乗り越えて立ち上がろうとする親の表現など
どこかで子供の死を表現せざるを得ない場合があるはずで
そうした時に、テディベアを無造作に置くことで、子供の死を表現する場合があります
つまり、何を言いたいかというと、「テディベアが逃げ出す」という事は
歌詞の主人公が肉体的な意味ではなく、精神的に女の子から女性になる
あるいは、男性と対等、ないし、強くなって
男性に男尊女卑を止めるように教える、それができるように立ち上がる
という意味合いがあると考えられます

もしくは、「テディベアが逃げ出す→女の子が逃げ出す」ほどに
男性が色眼鏡で見てきている、という表現とも受け取れます
いずれにしても、テディベアは少女、ないし子供の表現であると考えられます

では一方で、ピカチュウは何を意味しているのかというと
ご存知、日本が誇るポケットモンスターのキャラクターと言うだけではありません
見た目には、どちらも可愛らしく、マスコット的な存在ではありますが
テディベアとピカチュウの最大の違いは「戦える」という事です

小さく、可愛らしく、一見すると守ってもらう存在
また、愛玩動物的な存在として見ることができ
このことから、外見的には男性が見ている時の女性のメタファーと考えられ
しかし、実際は守ってもらうような存在でもなく
自らの能力を駆使して強敵に立ち向かえるだけの力を持っていることから
内面的には女性の強さを表そうとしている、と考えられます

Wonder woman, don't you ever forget
いわゆるアメコミの出版社の一つ、DCコミックスのキャラクターである
ワンダーウーマンその人です
アマゾン族の女王の娘の戦士、という設定があります
場合によってはギリシャ神話の神々によって作られた人間であるとも
ワンダーウーマンの目的は、ギリシャ神話の軍神アレスの打倒らしいです
この曲においては、男性を成敗する存在として登場します

MadaBaka Beat
マダバカビートについては
Mother Fucker Beat (くそったれビート)とも
Mother Bucker Beat (跳ね馬の母親ビート)とも言われていましたが
wiwibloggs でのインタビューにて
日本語の『まだ馬鹿』ビートであるという事が明かされています
I'm not your toy, You stupid boy
あたしはあんたのおもちゃじゃないのよ、このおバカさん

歌詞の中では上記のようにした上で、人形とバカな踊りを見せる場面で言っています

考えられる解釈とすれば
男性を小ばかにする、という意味合いでの『挑発』か
男性目線だとそういう風に見える、という意味か
あるいは、男性目線で女性と遊んでいる姿を
『馬鹿なビートで踊っている』としている歌詞か
それか、女尊男卑的な状況を見せつけているか

いずれにしても、わざわざ日本語の『バカ』を使っているのは
You stupid boy に繋がっているという事で間違いがないはずです

I'll take you down now, make you watch
ちょっとこれが分からなかったんですけど
take you down と言えば、個人的には「やっつける」「倒す」
という意味合いで受け取ってしまいがちで
そうすると、ここの歌詞の意味合いは
「あんたを倒すわ、見ていなさい」になると思ったんですけど
Bridge の歌詞やOutro の歌詞が、I'll take you down now, make you watch me
~~、あんたを釘付けにする、になってると思うので
どう受け取ったらいいのか、ちょっとよく分からなかったです

A-A-A-Ani Lo buba!
「アニロブバ」とは、ヘブライ語「אני לא בובה」で
英直訳で「I'm not a doll」
意味は「あんたのお人形じゃないのよ!」です

I don't care about your 'stefa', baby
あんたの「ステファ」になんて興味ないわ、の「ステファ」とは
ヘブライ語「סטיפה」で、直訳で『大量の』という意味があります
直前の英歌詞 Ah, money man bling-bling とありますが
「bling-bling」とは、金品を見せびらかす際に使う擬態語であり
「金持ちが『札束を見せびらかす』」という意味で使われている為、『ステファ』は
「あんたが見せびらかせてる『大量のソレ』になんて興味ないわ」という意味になります
本来はお金を意味する「של מזומן」と合わせて
「סטיפה של כסף (大量のお金)」とすべきなのでしょうが、省略されているというわけです
参考までに、こちらのサイトで「סטיפה」の例文を探すと「a wad (多量の)」と出ます
http://context.reverso.net

Don't you go and play with me boy!
ここでの「play」は単なる「遊び」ではなく
性行為という意味での「お遊び」を意味していると思います
Veerse2 後半の歌詞ともかかります
分かりやすい説明はこちらの参考サイトをどうぞ
http://blog.makocho0828.net
  
ニワトリの歌唱について
特別この曲をユニークたらしめている理由の一つであるニワトリ歌唱は
単なるニワトリのモノマネではなく、複数の意味合いが込められています
まず「チキン」という言葉には、「臆病者」や「腰抜け」という意味があります
ヒヨコや若鶏が人間に追いかけられると逃げ出すことから、だとか
鳥類が四六時中周囲を気にする生き物だからだとか、理由は諸説ありますが
では、この曲における「臆病者」とはいったい誰なのかと言うと
それは女性ではなく男性であると考えられます
つまり、臆病者ゆえに、自分が負けると分かっている状況に陥りそうになると
相手を対等に扱わず、おもちゃとして扱うことで自らの安寧を保とうとする
それが、女性を下に扱う男性の考えである、という考察
かなりこじつけっぽく感じるでしょうが
そうなると、相手が男性であると女性であろうと関係なくなりますが
実際、インタビューでもそのような回答をしているようです
http://wiwibloggs.com

逆に、ニワトリ歌唱を女性を揶揄する表現として使っているとも考えられます
どこの国でも「女三人寄れば姦しい」と言われるように
男性と比べるとぺらぺらと喋る存在であると言われています
他の国々や、肝心なイスラエルでもそう思われているのかどうかは分かりませんが
少なくともイギリスではそんな感じです

この解釈をすると、Pre-Chorus の
He's a bucka-mhm-buckbuckbuck-mhm boy
での歌唱で辻褄が合うと思います
が、インタビューでは「ニワトリ=女性」という事は言及されていないので
深読みのしすぎかもしれません
  
歌い出しの歌唱について
歌い出しの歌唱については、ルーパーを使った表現
技術的なものであって、深い意味はないかもしれないが、と前置きをした上で
こちらの方が面白い解釈をされているので、ご紹介します

歌い出しの Ree, ouch, hey, hm, la については
それぞれに意味があってこの歌唱をしているとする説です
Ree = 電話(スマホ)の着信音、もしくは喜びの表現
ouch = 日本語で言うところの「痛いっ!」で、ただし肉体的ではなく精神的なもの
hey = 怒りの表現
hm = 苛立ちの表現
la = 前述3つのマイナスイメージの感情のリセット

この5つの発生をリピートすることによって
(実際は彼女のトレードマークのルーパーで、だろうけど)
男性におもちゃにされるときのサイクルを表現しているのではないか、という解釈

繰り返すが、これは深読みのし過ぎの可能性が高く
この解説をされている男性も最後にしつこく
本来はあくまでルーパーを使ったパフォーマンスの一環だろう

と注釈しています、が
確かにMVで見るNetta の表情を見ると、上記5つの表現によって
この曲で一貫して伝えたいメッセージを表現しているように見えなくもないです

  
その他
wiwibloggsさんの記事によると、作詞をした Doron Medalie が
インタビューで #me too に影響を受けてこの歌詞を書いたとも答えているそうです
インタビューリンク (ヘブライ語
実際、イスラエルでも #me too は大きな影響を与えているようですね


初見時の感想
Eurovision 2018 内部選考組 MV鑑賞レビュー記事 前編
http://sheilabirlings.blog33.fc2.com/blog-entry-5701.html

Eurovision 2018 もくじ記事
http://sheilabirlings.blog33.fc2.com/blog-entry-5521.html


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