Eurovision 2019 アルバニア代表 Jonida Maliqi の『Ktheju tokës』のMV驚くほど秀逸だから見て! ~MV考察記事~

『Ktheju tokës』のMVがアップされてるので見ていきます!
ということで、先日から始めているESC 各国の代表者一人ずつをレビューしていく記事です
アルバニア代表のヨニダ様に関しては、国内予選大会を見ていたので
楽曲そのものはすでにレビュー済み、かつ、和訳記事も制作済みなのですが
3月10日にアップされた、公式ミュージック・ビデオについてレビューしていないので
今回は単発でMVを見ていこうと思うのです

というか、私がこのMVをみんなに見てほしい
だって、MVがものすごく歌詞の内容をうまく表現していて
歌詞の内容が分かる人には、胸が締め付けられるんだもの

国内予選大会のレビュー記事はこちら
http://sheilabirlings.blog33.fc2.com/blog-entry-6233.html
この曲の和訳記事はこちら
http://sheilabirlings.blog33.fc2.com/blog-entry-6242.html

それでは、Jonida Maliqi の『Ktheju tokës』

これすごくない!? 私初めて見たとき衝撃を受けたよ!
改めて、アルバニア語で歌われているこの曲が、どんな歌なのかというと
この曲に書かれてある物語は、アルバニア暴動やコソボ紛争によって
アルバニアからの移住を余儀なくされた人々の苦しみがテーマになっている
苦しそうに、切なそうに、叫ぶように歌うサビでは
「Ktheju (帰ろう) tokës (土地へ) tende (キミの)」と歌われていて
遠く離れた異国の地での生活を強いられていることや
故郷に帰りたくても帰れないっていう苦しみ
何年も何年も自分のルーツである故郷に帰れないでいるがために
次第に自分の中のアルバニア人としての心が薄れていく恐怖
そういう、故郷を想うアルバニア人全員の悲痛な叫びを表現している曲で
歌ってるヨニダ一人とか、曲を作った Eriona Rushiti だけじゃなく
アルバニア人全体の想いを背負った曲になっている
まさしく、アルバニアを「Represent」するにふさわしい曲という

んで、そういう背景がある、ということを知って、このMVを見ると
もう歌詞に込められた想いと精神が詰まりまくってる!!
ミュージックビデオとしての出来が尋常じゃなく良いわ!!
荒廃した上に、炎が立ち上る街中を、まるで逃げるように駆けていく少年
その街中に取り残されているかのように見える、茫然と立ちすくむ少年
男の子と女の子が口論をしながら、逃げ場を探そうとするシーンもあって
これはもう、見るからに戦争で国外に逃げざるを得なくなった人間だよね

それから、Sia の Chandelier のMVみたいな裸スーツで
暗闇の中を走り続ける少年たち
基本的に、真っ暗闇の中で登場人物だけが見えるような演出は
ほぼ確実に、精神世界を表しているって考えて良いと思うんだけど
(世界中の色んな映像作品で使われている、割と基本的な表現方法)
その上で、裸スーツを着ている(ないし、裸の状態で走っている)って言うのは
剥き身の「心」をそのまま表しているっていうことでもあると思うの

特に、普通の世界じゃなく、鏡面世界みたいに上下さかさまの映像は秀逸
あれって、紛争ど真ん中の街中をかけながら逃げようとする少年の
足元に広がる水たまりに反射した世界だっていうのは分かるよね
多分だけど、逃げてる少年が、置き去りにしてきた命
あるいは、目の前で消えていった命を、逃げながら背負ってしまって
その、背負った命、背負った亡霊が、ずるずると少年の足に絡みついてきて
それで、途中で少年がこけてしまっているんじゃないかって思ったの
実際に、戦争で死んだ人全員が生きている人を恨んでるかなんて分からないし
もっと言えば、見ず知らずの死んだ人間が、自分のことを恨んでるかは分からないじゃない
だけど、生きている限り、死ぬまで考え悩み続けるのが人間だから
そういうところを目の当たりにした少年も、全部背負ってしまってるんだと思った
分かる人にだけ分かるように言えば、『Fate/stay night』の衛宮士郎的な感じ

そう考えると、MVは歌詞に書かれてあること
ヨニダがインタビューで答えたこと以上の物語を表現している気がして
なんかもう、見ているだけで私は心を打たれたよ

そんで、またヨニダの登場シーンで上手いのなんの
「黒背景は精神世界」っていう考え方を持ったうえで見ていると
ヨニダの世界には煙が立ち込めて周りが見えなくなるのは
先にも書いたルーツの流れがあるんじゃないかって思う
単に、現実世界の火事の煙がヨニダの世界にも来てるだけど
2世、3世になって、どんどんアルバニア人としての心を失っていく人たちが
だけど、どこかでアルバニアの魂を捨てずにいて
それで、アルバニアに対する心の向け方が煙の中にあるみたいな
そういう風に見えてくる気がするんだよね

加えて、雨の中で歌うヨニダは
完全にアルバニア人の涙を表現しているよね
演出としては、多分そこが一番わかりやすい部分だと思うかなあ

あと、何度も出てくる、木の枠組みでできた、円形の檻と
その中に閉じ込められている様に見える人間

あれがまた、この曲の精神を本当にうまく表現している様に思う
だって、あれ、もがこうが苦しもうが、故郷に帰れない
っていう状況そのものの表現としての檻ともとれるけど
多分、鳥の巣だよね
アルバニアのヒナたちが入った鳥の巣、つまりアルバニア人の子供たちを表現してて
戦争によって破壊され、街から逃げ出さざるを得なくなる映像が
巣から逃げ出さざるを得なくなる状況と、そのままリンクしてるように思う

たぶん、これは全部深読みじゃあないと思うよ
だって、一番最後に鷲の頭が出てくるじゃない
アルバニアの国旗見てごらんよ

鷲の巣=アルバニアという国、から出ていかざるを得ないっていう
アルバニア暴動やコソボ紛争をそのまま表現したMVになってるんだと思った

いやもう、このMV
歌詞の内容を理解してると、伝わるものがあまりにも多いと思う
ほんとに秀逸

全然どうでもいいけど
国内予選を兼ねた音楽大会 Festivali i Këngës のレビュー記事で
最初に、音源のみを聞いてレビューするっていう記事を、去年書いたんだ
http://sheilabirlings.blog33.fc2.com/blog-entry-6235.html
「地の底で脈動するマグマ、狂乱し降り注ぐ火山弾と、太陽すら隠すほどに空を覆う火山灰
自然のエネルギーと言うより、大地のエネルギーを感じる音の感触があるのがすごく好き」
って、その時の感想で書いてさ
結局のところ、歌詞の内容にはあってない解釈だったけど
でも、少なくとも今回のMVに炎が出てきて
「私が音楽の感触から得たイメージ、そんな外れてないじゃん!」って思った

ちなみに
ヨニダ様が Festivali i Këngës の時のおかっぱヘアーじゃなく
アルバニア版 The Voice にコーチとして出演した時のロングになってて
https://www.youtube.com/watch?v=Qzy_qwY-JU8
それが私はすごく嬉しかったりする

いやあ、やっぱり良いなヨニダ
Festivali i Këngës からじゃなくて
2016年に放送されたアルバニア版The Voice から好きな歌手だから
知ってる歌手が出場したっていうだけでもうれしいのに
こんなにすごい曲を、チーム全員で最高のMVと一緒に出すとか

そんでまた、MVの出来が良いってところがたまらんね
内容的には、そういうことを言うのちょっと不謹慎かもしれないけど
でも、少ない予算で、お金をかけずに
最高に出来の良いMVを作ったってところがすごいんだわ

Eurovision 2019 もくじ記事
http://sheilabirlings.blog33.fc2.com/blog-entry-6210.html

サムネ
https://www.youtube.com/watch?v=eo4aFzAkQkA
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