Eurovision 2019 ベルギー代表 Eliot の『Wake Up』をレビューする!  ~夜明けのシンフォニーを奏でる国ベルギー~

ESC 2019 のベルギー代表者と曲を見ていきます!!
3月10日、ホスト国であるイスラエルの代表曲が発表されたことで
ユーロビジョン 2019 の各国の代表者と楽曲が全て出揃いましたが
当ブログでは現在、各国の代表曲を見ていっている真っ最中
国名アルファベット順で、じゅんぐり曲やMVをレビューする記事を書いています
(定型文)

前回はベラルーシ代表者をチェックしたので
今回はベルギー代表
Eliot の『Wake Up』を見ていきましょう!

ここ最近、ベルギーのESC代表は、もっぱら国内予選で決まっていて
今年も例にもれず、国内予選を開かずに代表者が決定したようだね

ベルギーは、言語対立の関係で二つの公共放送局が担当していて
南部、フランス語圏のワロン地域の放送を担当する RTBF と
北部、オランダ語圏のフランデレン地域を担当する VRTとで
毎年変わりばんこにESCを担当していて
今年は RTBF が代表者を決めているみたい

毎年の出場者の出身地とかを見ても、その通りになっていて
昨年は北部フランデレン地域の VRT が担当していたから
フランデレン地域出身の Sennek が代表に決まり
バックについたのも、 HooverphonicAlex Callier だったわけで

となると、今年の代表者は、バックにつく人も含め、ワロン地域出身者になるわけだ
……と、思って調べてみたところ、やはりその通りの代表選抜
今年1月14日に代表者として抜擢された Eliot Vassamillet は、ワロン地域の都市モンス出身
楽曲製作は2017年に Blanche の『City Lights』の製作に携わった Pierre Dumoulin と
本当に、交代ごうたいでESCに参加しているのが分かるという

さて、楽曲と歌唱に関してだけど
正直、私はこの曲めちゃくちゃ好きだわ

ここ数年のベルギー代表の曲って、(2016年以外)統一された音楽観があって
2015年に Loïc Nottet が代表者として歌ってから続く
到底、Eurovision らしいとは言えないような、ハイセンスな曲が多い
薄暗さを感じさせるような、ダークな雰囲気に包まれていて
だけど、重苦しいというよりかは、無感情、無機質で冷たい音楽で
それでいて、聞いていると希望を見いだせるような感触の曲ばかり
例えるなら、ベルギーにはルネ・マグリットっていうシュルレアリスム画家がいて
光の帝国』や『水平線の神秘』のような世界観を、ESCでずっと続けてる感じがするんだ
そして、私は、その世界観がめちゃくちゃ好きなんだよね

先に書いたように、この曲は Blanche の『City Lights』と同じ人が製作しているから
作風がそもそも、結構似ているところがある
でも、そのことを知る前から、私は『City Lights』に近しいものを感じていた
似てる曲と言うより、聴いた瞬間、連想したイメージがほとんど一緒だったんだ

夜明けのシンフォニー
イントロの雰囲気は、シンセサイザーの音色でどこか宇宙的な雰囲気に溢れていて
壮大な世界が広がると同時に、閉塞感を覚えさせる暗闇のイメージがある
80~90年代の、ダークで重苦しいSFアニメとかで見るような夜景みたいに
人工的な光でありながら、人間を突っぱねるような無機質さと
都会の冷たさというか、感情の読めない不気味さのようなものがある

そこにピアノの音色とエリオットの歌声が入ることで
無機質な世界に、人間の心のやわらかさや温かみが生まれるんだけど
同時に、Aメロの時点では、エリオットの歌唱までもが曲と同じく無機質に聞こえる
Blance が『City Lights』でやっていたように、感情を出さないように歌っているというか

そこから、パーカッションが入ることで、音楽全体に疾走感が出てきて
世界は一気に加速して、サビへと繋がっていき
そうして到達したサビは、とにかく開放感が強い
光の中に自分の体が溶け込んでいくかのような音楽で、聞くだけで心が洗われる
ドラムの迫力もさることながら、声を張るエリオットの歌唱に感情が宿っていて
暗い世界の中で縮こまるんじゃなく、光の中に出ていこうとする力強さがあるんだ
聞く人を奮い立たせるような歌唱だよ

しかし、エリオットが声を張って歌うこと以上に
エリオットの歌唱の間に入ってくる、ピアノっぽいシンセの音色がものすごく好き
メロディそのものはものすごくシンプルではあるんだけど
あの音色を聴いていると、夜明けの瞬間を心で感じられる気がして
その「夜明け」っぽさが堪らなく好きなんだよ

ただ、「夜明け」って言っても、昇る朝日や太陽の輝きそのものの美しさや素晴らしさではなく
東を見れば、暗かった世界が徐々に白んできているのが視界に入りつつ
西を見れば、世界はまだ薄暗く、夜の静けさに包まれている状態で
この、夜と朝の、両方の美しさを同時に感じられるのが
そこに、『City Lights』であり、そして『Wake Up』だと思うんだ

Pierre Dumoulin の作風
Blanche の『City Lights』は、人工灯の温かみと、蛍光灯の冷たさや
都会の夜景に見る賑やかさと、繁華街に背を向ける路地裏の静けさ
そういうのを、常に同時に表現していたんだけど
エリオットの『Wake Up』にも、そういう対極の表現が同時にされている気がした
だって、完全に日が出終わった曲にするのなら、もっと明るくしてよかったと思うし
サビや、締めに切なさを残す必要はなかったと思うんだ
歌詞的にも、応援歌って感じの内容でもあると思うのに
曲自体は、そこまでぐいぐい来るような応援ソングじゃなく
聞いていると、自然と心に灯がともっていくのを感じるような曲だと思った
流石、同じ作曲家が手掛けているだけあって、作風が似ているよ

ベルギーの音楽はそんなに詳しいわけじゃないけども
東京ロンドンみたいに、もし、ベルギーにシティ・ポップがあったら
ベルギーの首都ブリュッセルなら、きっとこういう感じの曲になっているんじゃないかな

そんで、MVがまたすごく良いよね
他の曲でもそうしているように、この曲も、MVを見ずに音楽と歌だけを先に聞いたけど
改めてMVを見て、世界の作り方がものすごく上手くて驚いた
私がこの曲を聴いて思った夜明けっぽさが、割とそのまま表現されてるんだもの

最初は、エリオットが暗闇の中で、たった一人だけで歌っているよね
しかも、日の光が届かない世界だからか、エリオットの口からは白い息が漏れている
そこに、エリオットと同じように口を動かす女性が唐突に表れて
気が付くと、暗い部屋の中には何人も人がいて、徐々にその人数が増えていく
人が増えれば増えるほど、部屋の中はどんどん狭くなっていって、息苦しくなる

それと同時に、エリオットは壁の隙間から漏れてくる光を見つめていて
徐々に、差し込む光の数が増えていく
曲の後半にもなると、みんなで同じ方向を見つめているんだけど
最後には、穴だらけになった箱が解体されて
たくさんの仲間たちと共に、眩い光の中で歌うっていう演出
映像そのものは、想像していたものとはかけ離れてはいるものの
イメージしていた開放感と解放感が、確かにそこにあるように感じられたし
何より、最初は冷たいイメージのあった曲だけども
エリオットの魂を燃やすような熱い歌唱で曲が染められるのと同じように
最後には、エリオットが白い息を漏らしていたことなんて忘れて
温かみを感じさせるような映像になっているという

歌詞の内容に即したMVを作る国は多いけど
このMVは、歌詞の内容以上に、音楽に合わせた演出って感じが強い
直感的、視覚的に音楽を感じることもできるMVというか
死ぬほど低予算MVでありながら、完璧に音楽を表現していると思った

ESC的にはどうかな
個人的には、聞き始めて一発で好きになったけど
ESCファン的にはどう感じるんだろうかね
明らか、『City Ligths』と作風が同じではあるものの
ちょっと万人に受け入れられるように作ってる気がするというか
『City Ligths』よりも、素直で聞きやすい音楽になっていると思うから
広く人気になりつつも、深く好きになる人は少ない気がする?

例えば、Loïc Nottet の『Rhythm Inside』なんかは
今なおあの曲を超える国が出ないほど
ESCの曲の中でも、特別エッジが効いていた
でも、あるいは人を選ぶかもしれない曲でも
研ぎ澄まされたセンスとカリスマ性によって
ハマったら抜け出せない音楽になっていた

例えば、Blanche の『City Lights』なんかは
光と闇の対比がすごく上手くて
無感情で、冷たさを感じさせる低音歌唱と
温かみと人間味、感情を感じさせる高音ファルセットとの対比
機械的な電子音楽と、アコースティックなピアノの音色の対比
都市の明かり、街灯りの持つ二つの側面を上手く表現していて
『Rhythm Inside』同様、やっぱり深みのある曲だった

あれらと比べると、今回の曲は割と素直すぎるかも?
嫌いになる人がいなくて、誰にでも気に入ってもらえる作りになってる分
曲の深みが他の曲と比べると、ちょっと足りていないような気はする

もっとも、『City Lights』は今年の曲以上にシンプルな曲だったけどね
だって、ほとんどAメロとサビしかない曲だったわけだし
『Wake Up』だって構成そのものはほとんど同じだもの

まあ、流石に、Loïc Nottet と Blanche ほどなるとは思えないが
でも、好きになる人は、過去4年の中では多くなるんじゃないかな

なんにしても、今年もまた、Pierre Dumoulin が曲を担当してくれてよかった
こうなると、毎年ワロン地域が担当するなら Pierre Dumoulin
フランデレン地域が担当するなら Hooverphonic が曲を作ってほしいな

余談だけど
ベルギーって、2015年から変わったよね
正直、私って2015年以前のベルギーって全然出てこなかったりする
2007年からEurovision を追いかけてるけど
私の中でのベルギーのイメージって、もう完全に Loïc Nottet 以降って感じ
ブリュッセルのシティ・ポップ、夜明けが来るまさにその瞬間、って感じの曲

ちなみに、Loïc Nottet 以降の出場者は
Sennek 以外みんな The Voice 出身者だったりするらしい
エリオットに関しても例外なくね
ただ、この場合のThe Voiceは、ワロン版The Voiceのことを言うわけだけども
(フランデレン版は The Voice van Vlaanderen、ワロン版は The Voice Belgique)


次 >> 歌詞解釈と解説
http://sheilabirlings.blog33.fc2.com/blog-entry-6376.html

Eurovision 2019 もくじ記事
http://sheilabirlings.blog33.fc2.com/blog-entry-6210.html

サムネ
https://www.youtube.com/watch?v=17QXkQEckE4
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2Comments

通り酢ガリ  

へー

>ベルギーは、言語対立の関係で二つの公共放送局が担当していて
南部、フランス語圏のワロン地域の放送を担当する RTBF と
北部、オランダ語圏のフランデレン地域を担当する VRTとで
毎年変わりばんこにESCを担当していて
今年は RTBF が代表者を決めているみたい


これは目から鱗

まぁ大抵の日本人はそもそもベルギーがオランダ語圏とフランス語圏の二分状態にあることすら知らないだろうし(事実我々も知らなかったわけだし(;^ω^))

これは毎年交代で代表を決めることによって不公平感をなくそうということなのだろうけど、この辺が大陸圏ならではの事情だよねぇ、我々日本人には感覚的にピンとこないけど

そして今やデフォになりつつあるヴォイス出身者という事実。これも今の御時世を如実に反映しているけど

しかしというか残念ながらというのか、ヴォイス出身者のユーロビジョン代表者が優勝した事例はまだ無いのよねぇ



………………大人版では………………



実はジュニアユーロビジョンでは一人だけいるんだなぁ、ヴォイスとジュニアユーロの二冠を達成した子が

記念すべき初代ポーランドキッズ優勝者にして

https://m.youtube.com/watch?v=31jYCtSBB1s

翌年のジュニアユーロビジョン優勝という

https://m.youtube.com/watch?v=PT-EzzJxySI

大人達の誰もがなし得なかったヴォイスとユーロのW制覇という前人未到の快挙がジュニア世代で成し遂げられちゃったのよね~(;^ω^)

果たして大人版で彼女に続く快挙を成し遂げる人が今後現れるのか

2019/03/26 (Tue) 13:06 | EDIT | REPLY |   

シーラ B  

Re: へー

> 通り酢ガリさん
フランデレン版The Voice きっかけで知ったけど
ほんと私らも初めて知ったときびっくりしましたよね

> この辺が大陸圏ならではの事情だよねぇ、我々日本人には感覚的にピンとこないけど
「そうか、毎年変わりばんこしてるのか」
って文章見るだけでなんとなく納得するけど
実際に、じゃあそれがどれぐらいの事なのかピンとこないですよね
事実しか頭に入ってこない感じ
毎年の日本代表を東京か大阪から出す
……って言い換えても、結局ニュアンス全然伝わらないわけですし

> しかしというか残念ながらというのか、ヴォイス出身者のユーロビジョン代表者が優勝した事例はまだ無いのよねぇ
MARUVみたいに、The Voice に出てからだいぶ時間が経って
完全に独立した歌手としてやっていける場合ならそうでもないけど
今まだThe Voice 出身ってことで、下に見る人は一定数いるみたいですからねえ
方々のアンケートでは、「もうThe Voice出身者はいらない」っていう声もあるわけですし
あと、選ぶ側も、V優勝の実績だけで選んで
曲は放送局側(国内の運営側)が選ぶパターンも
結局どれもジェネリックEurovisionソングじゃん!
って言われることがありますし
そういうのが足かせになってるかも

> 実はジュニアユーロビジョンでは一人だけいるんだなぁ
これ全然知らなかった!!!!
しかも、まさに今書いた、Vで優勝してからの期間問題みたいなのを
まったくもってものともせずに優勝してのけるとか!

> 果たして大人版で彼女に続く快挙を成し遂げる人が今後現れるのか
今後現れるかどころか、彼女自身が大人版Vに出て優勝して
その足でESCで優勝してクアドラプル制覇とかしたりして

2019/03/26 (Tue) 20:29 | EDIT | REPLY |   

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