Eurovision 2019 エストニア代表 Victor Crone の『Storm』 和訳・歌詞解釈と考察

嵐を越えるために 色んなことを置き去りにした
果たしてボクの行いは正しかったのだろうか 

リトアニア、ラトビアと並んで、バルト三国の一つとして数えられるエストニアは
2009年から毎年、国内予選大会 Eesti Laul によって代表者を選抜しています
Eesti Laul には、とても質の高いアーティストたちが集結することや
この大会を通して代表者となった歌手はユーロビジョンでの成績が良いこともあってか
エストニアは、同大会を開催して以来、一度も内部選考を行っていないほどです

さて、大会には、合計で24組の歌手やバンドが集まり、歌を競い合ったようですが
今年で10周年を迎える Eesti Laul を制し、見事テルアビブ行きの切符を獲得したのは
スウェーデン人歌手の Victor Crone でした
Victor Crone は、18歳からアメリカに移住していたようですし
スウェーデンのESC国内予選大会 Melodifestivalen に参加したこともあるなど
あまり、エストニアとは接点がないような歌手ではあります
しかし、彼と共同で楽曲を製作したアーティストが
何を隠そう、元ESC2015 のエストニア代表でもある Stig Rästa なのです

ヴィクター・クロンとスティグ・ラスタによって、共同で製作されたのは
『Storm』という、カントリー調のポップスです
どちらかと言うと、スウェーデンのメロフェス向けに作られたような曲であり
いかにも万人受けする様な音楽として作られている曲、と言った印象があり
歌詞も、深すぎず浅すぎず、誰もが直感的に教訓を理解しやすいように作られている様です
人によってはありきたりな言葉を並べているだけ、と思うかもしれませんが
とは言え、だからと言って込められメッセージをないがしろにするものでもないと思うので
少なくとも、この記事を読み終える頃には
ハートで歌詞の内容を受け取れるようになってもらえればと思います
(別にこの記事に限ったことではないけども)

もくじ
歌詞和訳『Storm』
歌詞の内容について
歌詞解釈と解説
 - Verse1
 - Verse2
 - Chorus
 - Post-Chorus と Bridge
 - Outro
実は主人公は二人説
英語の文法がおかしいことについて
楽曲レビュー

国内予選大会 決勝


公式MV (スティグ・ラスタもいるよ!)

歌詞和訳『Storm (嵐)』
Verse 1
All my life I've wondered why
今までの人生でずっと考えていた
I keep fighting all the tides
ボクはあらゆる潮汐と戦いながら
For a million reasons that I find
ボクが見つけた幾百万の理由の為に
But I might, I might be all wrong
だけどもしかしたら、ボクはもしかしたら全て間違っているのかも
I’ve hit highs and I've hit lows
ボクには最高な時も最低な時もあった
But somewhere down the winding road
だけどそれは曲がりくねった道でだ
It felt like I could lose it all
まるで全てを失うかのような気分だった
But I might, I might have been wrong
だけどもしかしたら、ボクはもしかしたら全て間違っていたのかも

Chorus
A storm like this
この嵐は
Can break a man like this
こういう男を壊してしまえる
But when it all calms down
だけど、一たび落ち着けば
We're still safe and sound
ボクらは無事なままでいられるんだ

Verse 2
All my life I’ve tried to find
今までの人生でずっと探していた
The meaning of what's left behind
置き去りにしてきたモノの意味を
They say it's life itself
みんなはそれが人生だなんて言う
But I feel It might, it might be all wrong
けれども もしかしたら、もしかしたら全て間違ってるんじゃないかと感じるんだ

Chorus
A storm like this
この嵐は
Can break a man like this
こういう男を壊してしまえる
And when it all calms down
そして、一たび落ち着けば
We're still safe and sound
ボクらは無事なままでいられるんだ
A storm like this
この嵐は
Can break a man like this
こういう男を壊してしまえる
And when it all calms down
そして、一たび落ち着けば
We'll be safe and sound
ボクらはみんな平穏に暮らせるんだ

Post-Chorus
Even if the sky falls down
例え空が落ちてきたとしても
We can turn it all around
ボクらならひっくり返せる
We'll escape the darkest clouds
ボクらなら暗い雲からも抜け出せる
Then we'll be safe and sound
そして、ボクらは平穏無事に過ごせるんだ

Bridge
Wherever we may go
ボクらがどこへ向かおうと
Whatever happens down the road
道に何が起ころうとも
However far from home
どれだけ故郷から離れようとも
I know we won't let go
ボクらは諦めないさ

Chorus
A storm like this
この嵐は
Can break a man like this
こういう男を壊してしまえる
But when it all calms down
だけど、一たび落ち着けば
We're still safe and sound
ボクらは無事なままでいられるんだ

Post-Chorus
Even if the sky falls down
例え空が落ちてきたとしても
We can turn it all around
ボクらならひっくり返せる
We'll escape the darkest clouds
ボクらなら暗い雲からも抜け出せる
Then we'll be safe and sound
そして、ボクらは安全で静かになれるんだ

Chorus
A storm like this
この嵐の様に
Can break a man like this
こういう男を壊してしまえる
And when it all calms down
そして、一たび落ち着けば
We'll be safe and sound
ボクらはみんな平穏に暮らせるんだ

Outro
In no time the storm will end
嵐がやむその時に
It'll be alright again
全部が元通りになるさ
The battle scars won't matter then
闘いの傷も気にならなくなる
But I might, I might be all wrong
だけど もしかしたら、もしかしたらボクは全部間違っているのかも

英語歌詞参照元
https://genius.com/Victor-crone-storm-lyrics
https://lyricstranslate.com/en/victor-crone-storm-lyrics.html

歌詞の内容について
この曲の内容は、『Storm (嵐)』と題しているように
どんなに嵐のような辛いことがあっても、それを過ぎてしまえば
また平穏無事に暮らせるよ、と言う内容のように見えます
……が、実は単なる応援ソングと言うわけではありません

困難な状況を乗り越える上で、自分が何を犠牲にしてきたのか
自分が置き去りにしてきたという選択が正しかったのかどうか
その事をしっかりと考えながら前に進む必要性、それを説いている曲でもあります

と言うのも、この歌詞の主人公は、これまでの人生、様々な困難な状況に直面し
そのたびに、乗り越えて穏やかになった世界も見てきている様なのですが
しかし、「そうして乗り越えた自分の行いは、果たして正しかったのだろうか」という
迷いと葛藤で苦しんでいる様なのです

これは、歌詞の冒頭から一番最後に至るまで
主人公の心に引っかかる不安として、残り続けている要素であり
この曲の根幹にかかわる部分でもあります
「Storm」とは、あるいはそうした主人公の「迷い」のことを言っているのかもしれません

そのことを念頭に置いて、歌詞の内容を細かく見ていきましょう

歌詞解釈と解説
Verse 1
主人公は「迷い」を開口一番で語り始めます
「All my life I've wondered why (今までの人生でずっと考えていた)」
なぜ、「million reasons (幾百万の理由)」の為に
「all the tides (あらゆる潮汐)」に立ち向かってきていたのか
「I might be all wrong (もしかしたら、自分の行いは全て間違っているのかも)」
そんな考えが、主人公の脳裏に浮かび上がるのです

Verse1 の歌詞の中には
困難な状況に直面し、幾度となくそれを克服する様子が描かれています
例えば、潮の満ち引きを指す言葉である「tides」に見立てて表現したり
あるいは、「hit highs and I've hit lows」
直訳して、「高いところとと低いところを当てる」
転じて、「最高の瞬間と最低の状態」という言葉で表現するなど
主人公が、そうした状況を経験してきていることを表現しつつ
対になった言葉を並べることで、嵐の渦中と、そのあとの静けさのような
「嵐」の性質を表現している様です

しかし、その上で、主人公は今までの自分の行いに疑問を持っています
「But I might, I might be all wrong」
「だけどもしかしたら、ボクはもしかしたら全て間違っているのかも」
「But I might, I might have been wrong」
「だけどもしかしたら、ボクはもしかしたら全て間違っていたのかも」
過去の行いに対してのみでなく、これからの自分の行動も含め
今のまま生きていくのが本当に正しいのか、一抹の不安が彼の心に残ります

主人公の本音としては
「It felt like I could lose it all (まるで全てを失うかのような気分だった)」
裏を返せば、「何も失わずにいたかった」と言うことの様で
この考えがあるからこそ、主人公は「もしかしたら間違っていたのかもしれない」
という考えが頭から離れないようなのです

Verse 2
Verse1 で「何も失わずにいたかった」と考えている主人公は
「winding road (曲がりくねった道)」を通る過程で切り捨ててきたもの
あるいは、置き去りにしてきたモノに対して
「The meaning of what's left behind」その意味を知りたいと考えます
そうすることで、自分が間違っていたのかどうかが分かるからです

『Storm』の歌詞で肝になっているのは
間違いに対する主人公の考えが、全て「might (もしかしたら)」であることです
これまでの自分の行いが正しかったのか、あるいは間違っていたのか
それが、主人公には見えてこないため、心が苛んでいるのです
いっそのこと、間違っていた、と断言できる方が、ずっと心が楽なのかもしれません

ところが、主人公のそうした考えを理解してくれる人は、周りにはいないようです
「前に進むということは、何かを捨てて先へ行くということ」
「it's life itself (それが人生だ)」と、周りの人は主人公に対して言い放つのです
しかし、その考え自体が間違いなんじゃないか、と主人公は感じているようです
「But I feel It might be all wrong (それは間違いないんじゃないかと感じるんだ)」
Verse1 では、自分の行いに対する「もしかしたら」が
Verse2 では、それ(他人の考え)に対する「もしかしたら」へと変化していることからも
主人公の考えていることが読み取れるかと思います

Chorus
今、自分たちの身の回りで起きている、「A storm like this (嵐のような状況)」は
「man like this (どんなに屈強な男)」でも打ち負かしてしまうだろう
だけど、一たび嵐が過ぎ去ってしまえば
「We'll be safe and sound (安心して平穏無事に暮らすことができる)」
分かりやすく書けば、このようになる歌詞ですが

まず、表面をなぞると、サビの歌詞は、嵐に巻き込まれた状態を歌っています
「we (ボクたち)」と、自分以外の人に向けて歌っていることを考えると
Verse1 で言うように、幾度となく嵐を経験し、乗り越えた主人公だからこそ
かつての自分のように迷っている人に、優しく声をかけているように見えます

しかし、それと同時に Verse1 や Verse2 直後の Chorus であることを考えると
「ボクは間違っているのかもしれない」という考えそのものが
嵐となって主人公の心を蝕んでいる途中であり
いつか落ち着いて、心が穏やかになるんだ
と、どこか自分に言い聞かせるようにも見えてきます

「safe and sound」と言う言葉については、こちらをご参照
https://www.eigowithluke.com/safe-and-sound/

Post-Chorus と Bridge
ここで書かれてあることは、Verse1&2とは繋がらず
むしろ、Chorus のためにあるような内容に感じます
Post-Chorus に書かれてあることは、ほとんど Chorus と変わりませんし
Bridge に書かれてあることも、Verse の精神とはかけ離れていますが
前向きな Chorus の精神とはかみ合います

Outro
この曲の中で、最も意味深な内容が、Outro に書かれてあること、と言えるでしょう
Verse2 以降、ひたすら前向きな歌詞が続き
音楽的にもサビが連続してくるため、とても明るい世界が広がっていましたが
「嵐が来ても、落ち着けばきっと大丈夫!」と前向きになった気持ちに水を差すように
「だけど、もしかしたら間違っているかもしれない」と言う歌詞で終わるのですから
余韻を残すというより、梯子を外す様な歌詞で締めていると言っても過言ではありません

実は主人公は二人説
上記、Outro に残された謎を考察するに
この曲は、Verse1、Verse2、Outro の、自分の行いに自信を持てない主人公と
Chorus、Post-Chorus と Bridge の、「何とかなるさ」の精神を持つ主人公の
二人の登場人物で曲が進行しているのではないか、と考えています

つまり、「They say it's life itself (みんなはそれが人生だなんて言う)」と
Verse 2 で主人公が言っている「They (彼ら)」が、Chorus のことを指しており

逆に、Chorus で書かれている 「A storm like this, Can break a man like this」
「このような嵐は、こういう男を壊してしまえる」の「man like this」とは
Verse の主人公のことを言っているのではないか、と言う考察です

こう考えると、歌詞の中で書かれてること
歌い手が何に対して言っているのかが、より鮮明な形になって
歌詞全体の意味が分かりやすくなるのではないかと思います

これを、全くの別人が二人いる、と考えてもいいですし
両方ともが主人公の脳内の声である、と考えても良いと思いますが
少なくとも、二つの人格として考えると、しっくりくるのではないかと思います

英語の文法がおかしいことについて
ちなみに、英語圏の人たちは、Chorus の文法がおかしいと指摘しており
本来は「A storm like this, Can break a man like him」すべきところを
韻を踏むために「Can break a man like this」にしている、として
違和感を覚えるような歌詞になっていると言っている様です

ただ、個人的に思うことは
「This」ぐらいでガタガタ言うなよ
「Oximated」って書かれてないだけマシだと思え

ユーロビジョンの各国代表曲って、英語非ネイティブ
あるいは、ネイティブレベルだけど母国語ではない人が書いた曲が多く
結構、英語の文法がめちゃくちゃな曲が多いです
アルメニア代表のスルブイの曲なんか
アルメニア語の文法順で英語が並んでるようにさえ見えて読みづらいですし
それと比べれば、たかが「this」ぐらいでガタガタいうほどじゃないともいます

楽曲レビュー記事
こちらを参照
Eurovision 2019 エストニア代表 Victor Crone の『Storm』をレビューする! ~初心者向けカントリーセット~
http://sheilabirlings.blog33.fc2.com/blog-entry-6348.html

Eurovision 2019 もくじ記事
http://sheilabirlings.blog33.fc2.com/blog-entry-6210.html

サムネ
https://www.youtube.com/watch?v=CkdXzuDigNM
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